日々、雲のように流れて行く事象。世界中はエアに包まれている


by tenkuunomachi
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天空の街 2

それは前から考えていたことではあったけれども、機会をうかがって話出そうと思っていたわけではなかった。ただ急に思いついたように話出してみただけであった。
彼女は快く承諾してくれた。
すでに僕たちは肉体関係もあったし、どちらかの家に寝泊りするということはざらであった。
 初めて、彼女との肉体関係を持ったときはさすがに怖かった。
なんていうのか、もう二度と昔には戻れない感覚とでもいうのか、なにかと決別しなくてはならない気持ちだった。なんで新しいことを体験するのにこれほどまで怯えなくてはならないのかと思った。
 そう、彼女と知り合うまで僕はまだ初体験を済ませていない人間であった。彼女の方はどうやらそうでもなかったようだが。そのことに関しては劣等感は感じなかったが、自分だけがなにも知らないということに少し戸惑いを覚えた。
彼女とのセックスは夜に行われた。僕は照れながら一生懸命に下らないギャグを飛ばし、彼女も無理に笑ってくれた。
「ねえ、無理ならば、やらなくてもいいんだよ」
彼女はそういって僕を安心させようとしてくれた。
なんていうことだ、これじゃまるで立場が逆だ!そう言われてすでに逃げ腰になっている自分に恥じた。
 照明を落とすと、僕は酒をがぶ飲みしだした。
「酒クサイ男は嫌いれすかあ」
彼女は苦笑いを浮かべて、
「うん、なんかムードないよねえ」
と言った。
「そう、じゃあ今日はやめておくかなあ」
そう言いかけた時 急に彼女が抱きついてきた。
「こらいくじなし、お人好し、あなたは絶対に拒否できないような状況が必要ね」
彼女のリンスの匂と長い髪が僕の顔に覆いかぶさり、首筋を軽く撫でた。
僕はゆっくりと彼女の体に手を回して驚いた。
女性の体は以外にも細く、そして柔らかかった。
いままで空想していた弾力のあり張りのある体というのとはちょっとばかし違っていた。
「壊れてしまいそうだよ。今手の中にある君の体が」
「そうよ、とても弱いんだから大切にあつかってよ」
お互いに服を着たままであったが、それでももうすでになにもかもどうでもいいような気さえした。
彼女は色っぽく少し困った声で僕の耳もとに囁きかけてきた。

「服はぬがしてくれないのかなあ、このままだと先へ進めないよ」
「うん、ごめん」
「どうしてすぐそう謝るの?私責めていないから大丈夫だよ。気にしないで、不安にならなで」
なにもかも彼女は優しく包みこんでくれた。
 しかし、なかなか彼女の中に僕はそれ以上すすむことが出来なかった。
なんていうのか、他人の体内に自分の一部を任せてしまうということに恐怖すら感じていたのだ。
しかし、それは彼女も同じことではないか? セックスはお互いの信頼がないと出来ないものなのだろう。
 戸惑う僕を彼女は素早く察知したが、けして馬鹿にするようなことはなかった。
 「セックスって、女ばかりが怖い思いすると思っていたけどそうでもないんだね。なんだか嬉しいような恥ずかしいような...。でも安心して、私たちはきっと大丈夫だから」
結局男なんてのは女性の前では子供にしか過ぎないんじゃないのかとさえ思えた。
 僕たちは一緒になってから少しの間ゆっくりと動いては止まっていた。
たぶん、お互いに同じ温もりを長く共有していたかったのだと思う。
自分ひとりでは決して得られない温もりを欲していた。
時々、忘れてしまったのではないかと不安になり、ゆっくり動いては確認しあう。
溶けていく感覚は闇に落ちていくような感じにも似ていた。
時々、うっすらと目を開けると彼女は苦しそうにしてみせたり、安らぎに満ちた顔をして見せたりもした。
どれだけの間そうしていたのかはわからないけれども、やがて二人は最後を迎えた。
僕の初めての経験はあまりにも大きすぎる経験でもあった。
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by tenkuunomachi | 2004-07-09 01:14 | ショート小説