日々、雲のように流れて行く事象。世界中はエアに包まれている


by tenkuunomachi
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魚璃奈(さりな)

「ねえ...」
魚璃奈(さりな)が可愛らしい声で僕に聞いてくる。

「なんだい」
そう言って魚璃奈の方を見ると、魚璃奈はガス台の前でもじもじしている。

「な、なにをしているの?魚璃奈。一体どうしたの」

魚璃奈は首を振った。
「京(きょう)がさっきやってみせた、あの火がボオっと出るやつ、いったいどうやったらできるの?」

好奇心に満ちた瞳で僕を見つめている。

そうだ、魚璃奈にはまだ、火の使い方を教えていなかった。

「ねえ、ねえ、いったいどうやったら火、つくの?」

魚璃奈はおねだりをするように僕の腕にしがみついてくる。

ぴょんぴょんと跳ねる魚璃奈の頭を撫でながら、火をつけてみせた。

「わあ〜い。ついた、ついた。ねえ、京、火がついたよ〜」

「ああ、そうだね、でもね、これは危ないから魚璃奈は決して真似をしてはいけないよ...」

「うん、わかった!了解です」

そう言って魚璃奈は満面の笑みを浮かべてみせた。

...。魚璃奈はすでに見ためは15歳ぐらいだ。僕とだって10歳と離れてはいないはずだ。

ガスコンロ一つ扱えないはずがない。

言葉遣いだってもっと大人びていてもいいはずだ。

しかし、この子は...。

 そう、この子を最初に発見したのは雪の降る朝であった。

ゴミを出し、会社に向かう途中であった。

僕が駅に向かう時に通る雑木林を歩いていた時であった。

「!!!」

一人、5歳くらいの女の子が、白いワンピースのスカートを一枚着たままの格好で遊んでいた。

「寒そうだなあ...。一体、親はどういう躾をしているんだろう...」

雑木林には雪がたくさん積もっている。

少しの間、立ち止まって見ていると、今度は僕に気がついたのかこっちによってきた。

ペタペタペタ...。

はは、可愛らしいもんだよな...。と最初は微笑みながら女の子の事をみていた。

しかし、次の瞬間、驚きに変わった。

!素足!この子、素足だ...。足が凍傷を起こしてしまうぞっ。

僕はすぐに女の子を抱き上げた。

「ねえ、君の両親はどこにいるのかなあ」

しかし、女の子はただ首を振るばかりであった。

「困ったなあ...、こっちも会社に急がなくてはならないしな...」

「こまったなあ...、こっちモかいシャにいそがなクテハならナイシナ...」

「!」

この子、言葉が喋れないのか?それともこんな小さな子供に僕はからかわれているのか。

「ねえ、僕はねえ、今、とっても急いでいるの。わかるかなあ〜」

しかし、女の子はきょとんとしている。

「まいったなあ、こんなところに女の子が一人...。変質者のいい餌食になってしまうぞ。しかし、だからといって会社まで連れていくわけにもいかないし...。交番にでも届けるか...」
(まあ、それもなんかあまりいい方法とはいえないけれども、しかたあないか...。でもいやまてよ!

もし、この子の親が実は側にいて連れて行くところを見られたりしたら...。それこそ今度は僕が変質者扱いされちゃうじゃん。まずいって、もうすぐ、結婚してもおかしくない僕が実は変質者...。そんな誤解を受けて見ろ!僕は完全に後ろ指刺されるぞ!(*ご免なさい。この表現って一部のお方に対してとても失礼ですよね。要は社会問題を起こすか起こさないか...、いやそれとも...、まあいいや!とにかくご免なさい。悪気はまったくありません)いったいどうすれば...」

女の子は薄着で外にいた割には以外と温かった。
肩まで伸びている髪の毛もさらさらとしている。

しょうがない...。おいていくしかないかな...。きっと、僕の考えすぎだったんだよな...。うん、きっとそうだ。そう考えた方が楽だ。大丈夫、会社に行って、普通に仕事でもしてればすぐに忘れるって。

そう無理に自分に言い聞かせた。
しかし、僕は本当にこんな薄着の、言葉もろくに喋れない女の子をほったらかしにして行けるのか。

だめだ...。できない。できな〜い。

僕が一人悩んでいると、なんだか女の子がさっきより少しばかり重たく感じられるようになってきた。

「ええっ!」

目の錯覚か、女の子が一回りばかり大きくなたように見える。

「ちょ、ちょっと...。なによ、これ...」

僕が驚いていると、女の子は僕の腕から飛び降りた。

ただ、唖然として見ていると、女の子は再び雪の中を素足でかけずりだした。

ペタペタペタ...ドテッ。

「あっ」

女の子は僕の見ている前で転んだ。

「えへへ、転んじゃった」

 初めて日本語をちゃんと喋った!
今、この子は僕の目の前で確かに意味の通じる日本語を喋った。
何で?さっきまではなにを聞いてもまともな反応が返ってこなかったのに...。

「ねえ、君さ、ちゃんと言葉話せるのかい?」

僕はホッとした。とにかくこの子を親元に返せば僕の責任はもうなにもない。

目の前の子供はコクッと頷いた。

「よかった。じゃあ、君のお母さんでもお父さんでもいいから会わせてくれないかなあ...」

するとまた女の子は首を振った。

「もしかして...いないとか...」

すると頷いた。

げげっ、このパターンってまずいじゃん。一体、僕にどうしろっていうの。

僕が女の子から少し後退りした時だ。

「う、うわ〜ん!」

し、しまったあ!

気が動転してしまったからであろうか...。

女の子の手を引いてそのまま交番に向かっていた。

道端で誰かにあったらどうしよう...。

いろんな不安が頭の中をよぎったがとにかく交番にいくしかない。
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by tenkuunomachi | 2004-07-14 20:16 | ショート小説