日々、雲のように流れて行く事象。世界中はエアに包まれている


by tenkuunomachi
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2004年 07月 09日 ( 4 )

天空の街 1

時折、感じる事があるんだ...。
時間の流れるのが早すぎるって...。
もう二度と過去には戻れない。
過去に戻ってもう一度やり直したい事がたくさんある。
でも、それ以上になにも時間を気にしなくてもよかったあの頃に戻りたいって思うんだ。
一年が過ぎ僕はまた新たに歳を重ねる。生きていれば当り前のように訪れる事。
十代の半ばの時は自分がまた一つ大人になる事にたいしてなんの違和感も覚えなかった。それが当然のように感じられたんだ。
けれども今、早すぎる時の流れに戸惑っている。僕はきっと精神(こころ)だけ置いてきぼりにされたんだ。肉体だけが急速に流れる時間を正確に受け止め、精神だけが忘却の彼方へと、思い出の中へと追いやられてしまった。
時間は残酷だ。出会いがあれば別れもあり、誕生があれば喪失も訪れる...。なんでもないかのように行われていた行為が、自然のように顔を合わせていた大切な人が、突然にもう二度と繰り返される事がなくなってしまう。
 さよならを言う側であった自分自身もいつの日か見送られる側になる...。
その時に僕は彼等にどんな言葉を残してあげられるのだろう...。
自分自身にどんな言葉をかけてあげられるのだろう...。


雨あがりの空気は気持ちいい。夢の中にいる気分にさせてくれるから好きだ。
湿気を含んだ風が頬をなでていく。
視線は地面から空へと伸びていく。
まだなにか起こりそうな予感...。
大量の湿気を内包した雲は神の様に悠然としている。
じっと見ているとそれはいつのまにか母の様に見えてきた。
きっと僕は母に優しく包まれる事を祈って天へと飛しょうしていくのだろう。

                     プロローグ
                      
 気がつくとどこからかオルゴールの音色が聴こえてきた。
僕はその聴き慣れないメロデイに魅かれ歩き出していた。
気がつくと裸足のままその音色を追いかけていた。
地面は石造りで、凸凹の凹凸が足に伝わってくる。
周りの建物はすべておうど色の壁であった。
オルゴールの音色は聴こえてくるのに誰もいない街並み。
不思議ではあったがきっとあの音色を辿っていけば解決するに違いない。
 歩きすぎて足は棒のようになってしまった。それに変なことに体が重たくて思うように前に進めない。
あえぎながら空を見上げて見ると雲の流れていく様がみえた。
かなり流れが早い。
 雲を見ていると音が聞こえてきた。
地響きのような音。
きっと街の住民も含めて誰もが、全てのものがここから立ち去っていってしまったのだろう。
あのオルゴールの音はきっと時の流れからこぼれ落ちた残骸だったに違いない。
結局、僕がくるころには全てのものは形のみを残すだけだったのかもしれない。
おうど色の壁にしょぼくれてつったている僕の影が映っている。
僕がどこに逃げ出して見ても影はかならずついてまわるようだ。
それは僕という人間をくっきりと映し出しているようであった。
 重い足を引きずりながら僕は柔らかな光を受けて金色に反射する壁にもたれかかてみた。
きっとこんなことは幻想に違いないと考えながら...。
1
 どんな想いも現実には叶えられないと分かったときから、渇望へと変わるものだ。
不幸にも夢を現実(本物)にしようと願った時から業(カルマ)はついてまわるものだろう。
きっと誰もが心の中で何度も反すうしてみては、その距離に絶望すら感じてしまうに違いない。
時には死にたくなる程の衝動を覚え、狂いかけた自分の哀れさを必死に隠そうとし、そして、誰かに伝えたいとさえ思う。
 二律背反した思いはせきをきって流れ出ようとし、その度に声を失う。
 誰に救いを求めようというのだ。
 誰がこの足臥せから僕の魂を解放してくれるというのだ。
僕はたしかに探し求めていた。
それを...。
誰にも知られることのない僕だけの宝物を...。
たとえ、それが本当はガレキでもかまわないから...。
確かめることさえできれば納得できるはずだから...。
それすら出来ないのならば、いっそうのことこの目と耳と心を全て潰してしまいたいと考えながら。
                      2
 僕たちは同棲していた。僕も彼女も社会人であったのでお互い生活にはそれほど困っていなかった。
 同棲というとなにかぞくぞくとくるものがあるかもしれない。
別になにも悪いことをしているわけでもないのに、この二文字は照れ臭くなる言葉だ。
 彼女と同棲生活を始めてからもう二年が過ぎた。
 もともと、僕も彼女もお互いに一人暮しをしている身であった。
僕が二十四歳のときにこの生活は始まった。彼女は僕より二つ年下であり、大学のサークルでお互いに知り合ったのちに彼女の卒業が決まってから二人の同棲生活が始まった。

「ねえ、私の靴下知らない?」
日曜日の朝の出来事であった。
僕はたった今眠りから覚めたばかりであった。
「知らないさ、どうせ家の中にいるんだしかまわないんじゃないの?」
「そんなこと言って〜実はあんたが私の靴下はいているんじゃないの?」
そういってまだ布団の中にくるまっている僕の足を点検しだした。
「おいおい、朝から変な真似はよせよ」
「そう言われてもねえ〜前なんか私のストッキングはいて寝てたことあったしな〜」
「ちょっと、あれはその前日、二人とも酔っ払ってて、変なゲームに熱中したまま寝ちゃったからだろ」
「そう?そうだったけ?変なゲームって、私どういうのだったか詳しくは思い出せないけれども、きっとおもしろかったんじゃないの?」
僕は照れながらも笑ってみる。
「そう、最高とまではいかなくてもなかなか興味の湧く実験であったよ」
「まあいいかあ、べつに靴下なくてもさ、いいよね」
「うん、それよか、パンツいっちょでいるあなたは靴下よりももっと別なものが必要だね」
そう言われても彼女はなんら恥じる様子はない。
 彼女の右側の乳首にはピアスの穴の跡がある。
ちょうど、彼女が背中を反らすと両方の乳房がツンと上を向き、僕の目は乳房そのものよりもピアスの穴の方に目がいってしまう。
 最初、彼女の胸ピアスを見た時ショックを覚えた。あれは大学のサークルでお互いに初めて知り合ってまもない時のことだ。
突然、彼女が自分は普段 乳首ににピアスを付けていることを告白し、特別に見せてくれると言ったのだ。

その時恐怖と興奮が入り交じっていた。
「ねえ、触ってみてもいい?」
勇気をだして聞いてみると彼女は恥ずかしそうに身をよじった。
「ははは...駄目に決まっているよね」
いいよって言うかと思ってわざとらしく照れてみせたが、あっさりと断わられた。
もともと、乳首のピアスを見せてくれるって言い出したのは彼女の方であったのに...。
僕は子供のようにすねて見せただけだった。
 その時は何故、彼女が自分の乳首にピアスの穴を開けたのかは聞けなかった。
一瞬、僕は自分の乳首にピアスをつけてみることを想像してみたが、僕の小粒な乳首のどこに針を通せばいいのだろう?
 自分の胸を見てあからさまに考えていることが伝わるように演技してみせたが、その時の彼女は少しも笑ってくれなかった。
 「ねえ、もしかして僕に自分の秘密を教えたこと、後悔してたりする?」
 「うん、すっごく後悔している。どうせあなたの秘密なんて教えてくれそうにないしね」
 「例えば僕が密かに恋こがれている彼女のこととか?」
 「どうせ、そんな風に言うと思ったよ。もう君には期待しない」
冗談っぽく言って笑って見せた彼女であったが、僕は彼女の横顔を見て自分の秘密を打ち明けないわけにはいかないと思った。
彼女は顔は笑っていたが、僕への信用はがた落ちの気がした。
信用できない人間をいつまでもそばにいさせるわけはない。
 僕は言葉の一つひとつを慎重に選んで話はじめた。
「まず、僕はとても自分の中のイメージを大切にする方なんだ。それはどんなことかというと...」
彼女は目をクルクルさせながらその続きの言葉を待っている。
「ほ...ほら、なんていうのかなあ、男性でも女性でも相手の体の造りにしか関心を持たなかったりする人っているでしょう」
そこまで話した時、彼女はこくりとうなずいて見せた。
良かった。まだこの話は続けられる。
僕は話す順序を一生懸命に整理しながら、再び言葉を続けた。
「そのう、お互いに第一印象てのはあるからさ、どうしても最初は人を外見で判断しちゃうじゃない。で、ここからが重要なんだ。僕は決して人を外見で判断するなとか、人間は中味で勝負だなんて言うつもりは全然ないんだ。むしろ僕の中ではその人の人格とか生き方とかはどうでもよくて、勝手に僕の中でその人は形造られていくんだ」
彼女は僕の方を見て可愛く笑って見せた。
僕が照れていると、彼女は誤解を解くかのように話し出した。
「そんなこと誰にでもあることじゃないの。特に思春期の女の子なんて自分の好きになった人を勝手に理想の王子様にしちゃって恋に恋しているぐらいなんだから」
「そういうのとはちょっと僕のは違うんだよなあ」
「なに?その言い方だけじゃよくわからないよ」
僕はあらためて自分の中から言葉を選び出す。
「なんていうのかなあ、どうしても空想の世界に傾いてしまうところがあるんだよね」
彼女は大きくうなずいて見せると、またそれに対する自分の意見を語り出した。
「誰でも大かれ少なかれそんな気持ちってあるよ。だってやっぱり現実ってのはあまりにも小さくて色あせて見えて、予測のつく未来であったりして、なにもかも忘れてしまいたくなることばかりなんだもん」
彼女の一つ一つの言葉はあまりにも正確すぎて、僕はもうなにもそれ以上話すことはないように思えた。

「ねえ、私の家に来てみない?」
彼女の家にはまだ一度も行ったことはなかった。正直言って興味があった。
「うん」
僕はニコニコしながらうなずいた。
「ああ、その顔。まったく無邪気っていうのかなあ。普通女の子の一人暮しの部屋に招待されるっていったらもっといやらしい顔するものなのに」
「へえ、前の彼はそんな顔して見せたの?露骨だなあ」
「ううん、まだ誰も入れたことはないよ」
僕が一人どきどきしていると、彼女はまた笑う。
「ははあ、初めての人として受け入れてもらえると知って変な空想に耽っているな。スケベ」
「そ、そんなことはないよ。僕はとても紳士だからねえ。そんな変な気持ちはさらさらないよ」
「そうなのお、残念ねえ、私ちょっとがっかりした」
彼女も僕もすでに二十歳を過ぎている。なにがあってもおかしくはないし、当り前の年ごろだ。
「残念ってなにがあ。なにが残念なのかなあ」
そう言って彼女の顔を見ると舌を出していた。
まったく彼女の方が上手だ。
僕一人だけが自分の言った言葉に照れていた。
「まったく急に中年じじいみたいになるんだから」
「ああ、自分から人をはめといてそれはないだろう」
「えっ、以外と本気かもよ」
そんな冗談を言いながら僕たちは彼女の家に向かった。
 正直のところその時の僕はまだ彼女と清い関係でいたかった。
お互いに多くの秘密を隠し持っていたかったのかもしれないし、ただ今以上の関係になるのが嫌だったのかも知れない。
 お互いに、いや、少なくとも僕自身はまだ中学生の交際をしている気持ちでいたし、実際彼女はまだ16.17歳にしか見えなかった。
僕は誰にでも褒められるような交際がしたかっただけなのかもしれない。
もちろん、彼女の気持ちの中では僕は単なる友達でしかないかもしれない。
だけれども、彼女は特につきあっている人はいないようだった。
僕にとっては今の状態が一番気持ちよかったのだろう。
特に誰かに自分の好きな人をとられるわけでもないし、また互いに自分たちの秘密を見せあうわけでもない。この軽い状態は全てを円滑に進めてくれるし、お互いに慣習や規則に縛られることはない。
 そういえば、ドライなセックスとかセックスレス、セックスフレンドといった言葉が流行出しているけれど、僕の中はいつもそれであり、悪く言えばいつまでも子供のままであった。
常に誰かの目が気になり、誰かに褒めてもらいたくて、誰かに愛してほしくて、誰かに愛を伝えたくて、それらの全ては僕のひとりよがりとわかっていてもお互いにストレスのない関係を築くためには必要なことであったのだ。
彼女の家に出入りする関係になった僕たちはしだいにその距離を縮めていった。
ある日、僕たちは約束を交した。
「僕は今年卒業し、もう社会人になるけれど、そしたら僕たち2人で一緒に暮らさない?」
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by tenkuunomachi | 2004-07-09 01:17

天空の街 2

それは前から考えていたことではあったけれども、機会をうかがって話出そうと思っていたわけではなかった。ただ急に思いついたように話出してみただけであった。
彼女は快く承諾してくれた。
すでに僕たちは肉体関係もあったし、どちらかの家に寝泊りするということはざらであった。
 初めて、彼女との肉体関係を持ったときはさすがに怖かった。
なんていうのか、もう二度と昔には戻れない感覚とでもいうのか、なにかと決別しなくてはならない気持ちだった。なんで新しいことを体験するのにこれほどまで怯えなくてはならないのかと思った。
 そう、彼女と知り合うまで僕はまだ初体験を済ませていない人間であった。彼女の方はどうやらそうでもなかったようだが。そのことに関しては劣等感は感じなかったが、自分だけがなにも知らないということに少し戸惑いを覚えた。
彼女とのセックスは夜に行われた。僕は照れながら一生懸命に下らないギャグを飛ばし、彼女も無理に笑ってくれた。
「ねえ、無理ならば、やらなくてもいいんだよ」
彼女はそういって僕を安心させようとしてくれた。
なんていうことだ、これじゃまるで立場が逆だ!そう言われてすでに逃げ腰になっている自分に恥じた。
 照明を落とすと、僕は酒をがぶ飲みしだした。
「酒クサイ男は嫌いれすかあ」
彼女は苦笑いを浮かべて、
「うん、なんかムードないよねえ」
と言った。
「そう、じゃあ今日はやめておくかなあ」
そう言いかけた時 急に彼女が抱きついてきた。
「こらいくじなし、お人好し、あなたは絶対に拒否できないような状況が必要ね」
彼女のリンスの匂と長い髪が僕の顔に覆いかぶさり、首筋を軽く撫でた。
僕はゆっくりと彼女の体に手を回して驚いた。
女性の体は以外にも細く、そして柔らかかった。
いままで空想していた弾力のあり張りのある体というのとはちょっとばかし違っていた。
「壊れてしまいそうだよ。今手の中にある君の体が」
「そうよ、とても弱いんだから大切にあつかってよ」
お互いに服を着たままであったが、それでももうすでになにもかもどうでもいいような気さえした。
彼女は色っぽく少し困った声で僕の耳もとに囁きかけてきた。

「服はぬがしてくれないのかなあ、このままだと先へ進めないよ」
「うん、ごめん」
「どうしてすぐそう謝るの?私責めていないから大丈夫だよ。気にしないで、不安にならなで」
なにもかも彼女は優しく包みこんでくれた。
 しかし、なかなか彼女の中に僕はそれ以上すすむことが出来なかった。
なんていうのか、他人の体内に自分の一部を任せてしまうということに恐怖すら感じていたのだ。
しかし、それは彼女も同じことではないか? セックスはお互いの信頼がないと出来ないものなのだろう。
 戸惑う僕を彼女は素早く察知したが、けして馬鹿にするようなことはなかった。
 「セックスって、女ばかりが怖い思いすると思っていたけどそうでもないんだね。なんだか嬉しいような恥ずかしいような...。でも安心して、私たちはきっと大丈夫だから」
結局男なんてのは女性の前では子供にしか過ぎないんじゃないのかとさえ思えた。
 僕たちは一緒になってから少しの間ゆっくりと動いては止まっていた。
たぶん、お互いに同じ温もりを長く共有していたかったのだと思う。
自分ひとりでは決して得られない温もりを欲していた。
時々、忘れてしまったのではないかと不安になり、ゆっくり動いては確認しあう。
溶けていく感覚は闇に落ちていくような感じにも似ていた。
時々、うっすらと目を開けると彼女は苦しそうにしてみせたり、安らぎに満ちた顔をして見せたりもした。
どれだけの間そうしていたのかはわからないけれども、やがて二人は最後を迎えた。
僕の初めての経験はあまりにも大きすぎる経験でもあった。
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by tenkuunomachi | 2004-07-09 01:14 | ショート小説

天空の街

5
 彼女と一緒になった初めての夜、僕も彼女も興奮していてなかなか眠れなかったのを覚えている。
僕はなにかと新しい体験を神秘的なものとして考えがちではあるが、あの初体験は本当に劇的な変化があったのを覚えている。
 まるで、自分の中に新しい感覚とでもいうのか、第6感が宿った気さえした。
おもわず興奮を抑え切れずにそのことを彼女に話すと、彼女は静かに納得してくれた。
「そういうことって本当にあるらしいよ。ある意味では見つからなかった残りの半分を一瞬でも埋めることができたのかもね」
本当にそうかもしれなかった。実際、そのことを考えると何故か額の辺りがチリチリとした。
 僕たちはしばらくの間興奮状態が続いていたが、やがて深いような、それでいて今にも壊れてしまいそうな静寂が訪れた。
 僕は彼女の蔦のように滑らかな白い体をずっと眺めていた。
彼女の体は月明りだけがたよりの部屋の中で見ると一層神秘的であった。
  6
 あれほどの驚きを感じた僕の初体験であったが、何度も重ねることによって少しづつ慣れてきてしまった。
そうしていくうちにお互いのセックスに対する考え方、趣向などがわかってきた。
 何度かお互いに男と女のセックスの感覚の違いについて話してみたこともあった。
彼女も僕もお互いに成りえないモノに、得られるはずもない感覚を欲していた。
彼女は男の肉体の武器に大変興味があったし、僕といえば女性の秘所よりも女性の体の造りそのものに興味を覚えた。
 「ちょっとだけ交換してみようか?」
と出来るわけのないことを冗談とも本気ともつかない口調で言ってみたりするのだった。
 「男性って服を選ぶにしても大変でしょ。かわいそうねえ」
と突然のように彼女が話しかけてくれば僕もその話しに加わる。
「うん、女性みたいに異性の服も着れるわけじゃないしね」
「着てみたい?」
「着てみたいって、女性の服を?例えばどんな服」
「別になんでもかまわないんだけどね。そういえば女性のはいているスパッツとかレオタードってあるでしょ」
「うん。それがどうしたの?」
「あれってさあ、運動する時によく着るじゃん。いわゆる動きやすい格好っていう理由でさ」
「そうみたいね」
「でも実のこというとさ、全然楽じゃないんだよ。みんなすました顔していかにも健康そうに運動しているけれど、実際はスパッツは足に吸い付いてきて蒸れるし、レオタードなんておもいっきし喰いこむもん。あれってさ、よく考えて見れば一人SMだよね。なんていうのかさ、痴漢にあって被害者ぶりながらもさあ、心の底ではどうだか分からないってやつ?」
「なにが言いたいのかだいたいわかったよ。女性がそんな格好をするのは自己満足のためだって言いたいんでしょ。なんとなくわかるよ。だって男なんて自分の下着を何十着も持っていたりしないしさ、それにスパッツにしたってなんとなく周りの目が恥ずかしくてやめちゃうもん」
「まあ、男の中にもさあ、すごいナルシストな奴もいるけれどもさあ、全体的に女性ほど誇示したりしないよね」
「ちなみにさあ、西洋から伝わってきた服ってのはさあ、女性なんかの場合は特に機械的要素が強いよねえ。なんていうのかさ、服に自分の体を合わせていくっていう方法...。東洋の場合はさあ、服が自分に合わせてくれるっていう考え方があるじゃん。でも西洋の場合はそうじゃなくて規律のある格好がもてはやされるんだよね。自分自身を律するっていうのか、調教していくっていうのか...。レオタードなんかもその変形じゃないかなあ。まあ行き着くとボンテージだけどね」
 こんな話しができることは不思議であった。
普通の人間関係の中であったらこんなこと話しでもしようものなら変態扱いされるか、恥ずかしがって誰も真剣には聞いてくれないだろう。
「ねえ、あなた、女性もののパンテイはいてみたいとおもわない?」

「いや別に。そんなものはいたら小さすぎて多分はきずらいだろうし、そんな格好でずっといたら不便そうだしな」
「でも、子供の頃はブリーフはいていたでしょ?」
「ああ、あの時はね、親が買ってくれてたし、別に疑いもなくはいていたからなあ。でも決して体に密着するようなやつではなくて少しばかり余裕があったよ」
彼女はクスッと笑った。
「それは、大事な所を締め付けないためかなあ?」
「さ..さあどうなんだろね。でもとにかくゆるゆるだったよ。それに今はトランクスだし」
「だからさあ。今だけでいいや。パンテイが小さすぎて大事な部分がはみ出るっていうんならレオタードなんてどう?あれだったら一体型だしはみでないとおもうよ?」
「甘い。たぶん下から僕のかわいい双子のボールが顔を出すよ」
僕は自分の言葉に照れながらも続けた。
「い..一応標準サイズだからさあ。そ..そのプッ、無理があると思うよ」
彼女も笑いだした。
「なんだよう。笑うくらいなら言わなければいいのに」
「いいの、いいの、本気だから。今持ってくるよ。多分、こぼれないと思うよ。あのレオタード、ふともものラインが深めのやつだから」
彼女は笑いながら這うようにして自分の部屋にいってしまった。
数分後、彼女は黒いレオタードを持ってやってきた。しわくちゃで、それだと言われなければ洗濯物かボロきれと間違えてしまいそうだ。
「おいおい、本気かよう。やめようぜ」
「いいじゃん。いいじゃん。別に減るものでもないし。それともなにか不都合でも?」
「そういう問題じゃなくて、それを僕が仮に着たとする。その後君はそれをどうするの?」
「どうするって?」
「もう、二度とそれは着れなくなっちゃうんじゃないの?それでも構わないの?」
彼女はにやっとする。
「まさかあ、どこかの痴漢泥棒が取っていくわけでもないし。それにもうこれ着ないしね」
そう言って彼女は僕の前にレオタードを投げてよこした。
僕は急に恥ずかしさがどっと込み上げてきた。
「ねえ、窓のカーテンしまっているよね。それとさあ。このレオタード着るのさ、ズボン越しからでいいかな?」
「駄目!だ〜〜〜め。許しません。たくっ人の物をなんだと思っているのよ。大丈夫、きっちり洗濯もしてあるから」
「いやあ、じゃあどうすればいいのかなあ?」
彼女は勝ち誇ったように言いはなった。
「素肌への着用以外は認めません。お客さま、どうかご協力お願いいたします」
僕はしぶしぶ、複雑な気持ちのままはいてみた。
「ちょ、ちょっと、これ、本当にはけるのかなあ?」
僕はあまりのきつさに驚いていた。
ただ単にサイズが小さいという問題なのだろうか。
「大丈夫。それ、少し大きめのやつだから」
そうはいうものの、いつ切れてしまうのではないかと不安になる。
僕はなさけなくも、自分のたいしてたくましくない体をくねらせながらなんとか着てみた。
「まあ、恥ずかしい。あんた、こんな格好していて恥ずかしくないの?」
いきなり彼女は罵声を浴びせてきた。

「い..いや。君が着てみろっていったから...」
「うそつきね、まあいいわ。あんたのその格好を見た人が今夜のオカズにでもしてくれるんじゃないの?」
僕は恥ずかしくてその場にへたりこんでしまった。
すると彼女はまたにやっと笑った。なにかをたくらんでいるのだ。
「なんてね、でもさ、以外と、アダルトビデオに出ている子なんてこんなふうに自分で自分を責めているのかもね。結局は、なぜ後悔するかっていうと誰もがその行為自体が道徳的ではないからかもしれない。あんただって、本当は今 結構気持ちよかったりするはずだよ。結構ペニスが圧迫されて快感でしょ?」
そう言われてみればそのとうりであった。男物の水着とは確かに違う感覚だ。すごく引っぱられる。お尻なんて肉が中心に寄せられるような感じだ。いや、それよりも、女性物を着ているという背徳感と、このままの状態で誰かに見られたらどうしようといったスリルが全身を甘い痺れで満たしていた。
 まるっきし抵抗できない犬にでもなった気分でもあるが、逆に全てを彼女に委ねてしまいたい気にもなってきた。
「ふふふ、なってる。はまってるよ。あんた、女性みたいにしな作っちゃって、どうしたの」
「いやまじでこれすごいよ。その気にさせちゃうもん。やべえ、どうしよう」
「あなた、女性のくせに口のきき方がなてないわねえ。どうやらおしおきが必要かしら?」
彼女の態度もガラッと変わってしまった。
「ほら、歩けよ。いつもそんな格好しているのかよ。寒くねえのかよ」
いよいよ彼女と僕の性が逆転しだしていた。
 変な感覚だ。自分の中にもマゾ的な感覚があったのだろうか?
彼女はそれを僕に認識させるためにあえてこんなことをしてみたのであろうか...。
 「ほら、由美、しっかりしなさい!まだ、補習は残っているわよ。だらしがない」
複雑な気持ちであった。
一方的に強気に出て、相手を侮辱する展開は三流のエロ小説とかアダルトビデオによくあるパターンだ。
僕自身、そんな類のビデオを見て笑ってみたり興奮したりすることはあっても受け身にたつことはなかった。
それが、今 この状況に興奮すらしている。
これが、彼女とのプレイだからかもしれない。まったく見ず知らずの人とだったら、恥ずかしさのあまり逃げ出すだろう。
 今、僕は由美になっていた。
由美はどんな人間なのだろう。
きっと、補習があるぐらいだから学生だろう。
高校生、大学生?
中学生っていう展開は勘弁してほしい。
僕はそこまで年下は好みではない。
いろいろと考えているうちに彼女の指先が僕の股間を刺激しだした。

「ちょ、ちょっと、まって、それは反則です。コ、コーチ」
なるほど、被虐的なプレイがこんなにすごいなんて...。
今までは無理にでも自分から彼女を喜ばせなくてはならなかった。
そういうふうに自分の中で決め込んでいた。
それが今、ほとんど自由の奪われた状態で快感をむさぼっている。その快感は自分からそうさせるというよりは、むしろ逃げようとしながらも捕まってしまう気持ちにも似ている。
よく、女性が好きな男性に追いかけてもらいたくて逃げ出す気持ちにも似ている。
自分自身の幻想に酔うために一生懸命に切なそうなふりをする...。
以外と受け身でいるというのもいいのかもしれない。
そんなことを考えているうちに快感はすでに我慢の域を越えようとしていた。
「あ...駄目!やめて」
「本当にやめてしまってもいいの?」
彼女の顔には汗がうっすらと浮いている。
少しばかり意地悪な顔をしてみせる彼女であったが、僕は一瞬、由美と彼女をオーバーラップさせた。

ビクンと背中が痙攣した。
次の瞬間には僕の中から剥離した分身が飛び出していた。
「う、ああああ、あ〜」
なぜか、声までが高い声になっていた。
少しの間とはいえ、僕は完全に由美になってしまっていた。
すこしのずれもなく...。
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by tenkuunomachi | 2004-07-09 01:11

天空の街

7
 この頃見る夢は前みたいに寂しくなるような夢ではなくなっていた。
今日もまた夢を見た。
 僕は大学の構内を一人うろついていた。
今日は日曜日なのだろうか?構内には誰もいないようだった。
とりあえず、学生食堂の方にも行ってみた。
すると、そこには由美がいた。
僕はおもわず遠くの方から声をかけてみた。
「由美さ〜ん」
すると、カチューシャをつけた女性がこっちの方を振り向いた。
やっぱり、由美だ。間違いない。
彼女はテーブルの上に本を広げ、読書をしていた。
「なにを読んでいるのですか?由美さん」
すると彼女は本をいったん閉じてから、表紙を僕に見せてくれた。
「天空の街?」
僕が聞いたこともない題名であった。
由美はにっこりと微笑むと僕の瞳の中を覗きこんできた。
「あ、あのう、あの、由美さん。あの時はお世話になりました。す、すみません」
僕は彼女とのプレイで勝手に自分の中で由美になりきってしまったことを詫びた。
由美は僕の目を見つめたまま話し出した。
「私自身があなたの中での理想の女性なのかどうなのかは分からない。でもあなた、彼女と出会ってからかなり明るくなったわ。オープンになった。とてもいいことよ。なにが大事なのか。大切なものはなにか。そんなことはいつだって不透明で見えないものなのよ。あなたの気にしている慣習や道徳。あなたの中で起こる破壊衝動。あなたはきっとタブーラ、ラサ(白紙還元)を望んでいるの。だから、きっと自分がなにか大きなミスや、事故を起こすと考えてしまって、きっと自分は気が狂ってしまい、なにか危ないことを起こすのではないかと怯えるあまり、その前に自分を消してしまいたいと思うのよ。あなたは...」

そこまで由美が言いかけた時、その先を僕自身の言葉によって続ける。
「その結果、自分の考え方、この破壊能力を秘めた筋肉、およそ考えられる限りの僕の全てを根こそぎ改造してしまいたかった。僕自身が求めていたのは常に安定と調和であり、それこそが最高であった。それを維持するためには自分の考え方や行動様式を強引にでも律していかなくてはならなかったんだ。でも今、彼女のお陰でその呪縛から少しづつ解き放たれてきている」
「そう、そうね。じつは、この本はねえ、あなたについて書かれたものなの。まず最初の一文...。気がつくとどこからかオルゴールの音色が聴こえてきた。僕はその聞き慣れないメロデイーに魅かれ歩きだしていた...。どう?」
僕はドキッしたが同時に安心もした。
「その音色がなんなのか今は良く分かるんだ。だから、もうあの時みたいに迷ったりしないよ」
由美は微笑みながら語りかけてきた。
「いつもその音色が彼女のものとは限らないわよ。その時あなたはどうするの?」
僕は少しばかり返答に困ったがやがて答えを出した。
「それでいいんだよね、ただ今僕の中でその音色は彼女だったてことに気がついただけなんだ。それが本物なんなのかは誰にも分からない。でも分からないからこそ常に確認しあい、探検できるんだ。すべてに於いて僕は旅人として見聞きし、足で尋ね、そして吸収していく...。良いとされるものも、悪とされるものも...。それでいいんじゃないかな...」
「そうね...。しっかりやるのよ...」
周りの風景が揺らぎだしていた。
もうすぐ、この世界ともお別れだ。

8
 朝、目が覚めると、隣に彼女が寝ていた。
今日は日曜日。
平日の出勤時はお互いに家を出る時間が違うので、いつも同時に起きるとは限らない。
隣に彼女がいなくて寂しく思う時もある。
彼女も僕にたいして同じように考えているのだろうか?分からない。そんなことわかりっこない。
今、分かること...。彼女は今日もブラジャーをはずして寝ているということ。
乳首が可愛らしく上を向いている。
僕がかりに女性になったら、どんなスタイルになるのだろうか?
その逆もあり。
彼女は男性になったとしたら...。
 僕たちは今でも時々あのゲームを続けている。
今度は僕が彼女を教える番だ。
馬鹿馬鹿しくて笑えるようなストーリーを今考えている...。
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by tenkuunomachi | 2004-07-09 01:09